先月、ニューヨークに旅するので飛行機の中で読むかと思い、世界を旅する中田英寿氏の本でも読むかと最近出版された本を買い込んで行ったんですが、途中まで読んで、いまだにトルシエ元日本代表監督に対する私怨かなにかしらないけれどもしつっこい悪口が出てきたので、辟易として読むのを止めてしまいました。
中田氏がそこまで悪意を抱いているとは思えないので、書いたライターの方の感性によるものか、あるいは彼女になにかの思惑があってのことなんでしょうか。
というわけで、こうなったら逆にトルシエさんが書いた本を読んで口直しです。ちなみに僕は中田氏も大好きだし、トルシエさんもおもろいおっさんだなあということで大好きです。
「オシムジャパンよ! 日本サッカーへの提言」フィリップ・トルシエ著、2007年、アスキー新書
アジアカップが始まる前に、アジアカップへ臨む日本代表について書かれた本で、アジアカップが終わった今読むのもタイムリー。アジアカップ直後には、トルシエさんのヨルダン代表監督就任とか中国代表監督就任のニュースが出ていましたが、その後どうなったんでしょうか。
日本代表監督時代のあのおもろいおっさんスタイルではなく、冷静に(当たり前だ)、かつ日本代表への愛情豊かに書かれていて、楽しめました。
代表監督就任時、日本の代表チームをとりまく環境を変えていくべきと思い、トルシエさんは、まず問題をはっきりさせるためにあえて相手とわざと対立し、その上で合理的な答えを出す、という「暴力的な」方法を選んだ。そのために何度も技術委員長たちと大喧嘩したけれども、それはサッカーに対する情熱があればこそだった、と書いています。そういうやり方が、僕は「おもろいおっさんだなあ」と思っていたんですが、当事者たちは大変だったのかもしれません。さらに、オシム監督も同じことを考えているようだが、やり方がずっと自分より洗練されているし、人当たりもよいし、人格者だと述べています。やっぱおもろいおっさんだな。
本の内容はといえば、自分の前の98年までがどうだったのか、自分の時代はどうだったのか、ジーコさんの時代はどうだったのか、そして今、オシム監督の日本代表は、あるいは日本のサッカーはどうなのか、ということを、現在の世界のサッカー界(代表チームとクラブチーム)の潮流の中で論じていて、さすがにおもしろかったですよ。
クラブチームについては、ボスマン裁定以来、外国籍選手の移動が自由になり、結果、スター選手を多く獲得する資金力のある一部の金持ちクラブがトップに君臨するようになった。組織によるコレクティブな、戦術重視のサッカーではなく、個人技重視のサッカーへと時代は変わった。結果、トップクラブのサッカーはどこも似たような傾向になってきている、というようなことを書かれています。戦術に60%の比重を置いて個人技よりも組織を重視していた代表監督によるコメントという意味でも興味深かったです。(もちろん、金を出して選手を買い漁ることができない代表チームにあってはまた状況は異なるわけですが。)
そういったスター選手たちを見たいというのもファン心理としては当然で、たとえば先日のバルサ対F・マリノス戦も、めったにないよい機会でした。
もちろん本気のリーグ戦ではないし、コンディションもいまいちでしょうが、それでもその高い身体能力から時折見られるパワー、スピード、技術は楽しかったし、いいもの見たなあ、お金払った甲斐があったなあと満足度が高かったです。生ロナウジーニョなんて過去2回のW杯で2回見ただけだものね。
だから日本人はバカにされるんだ、という意見もあるかもしれないけれど、そういうスターシステムは日本に限ったことではないし、好むと好まざるとにかかわらず、高度資本主義社会における現実なんでしょう。
本の話に戻ると、ちなみに、中田氏の本で書かれていた確執のようなものについても、当時の日本では中田氏はスターとして扱われていたけれど、ヨーロッパの感覚からすると違和感というか意識にズレを感じたというように、冷静に触れられています。トルシエ流のやりかたでそのズレを正そうとしたのを、日本のマスコミの方々は「嫉妬」と表現してたわけですかね。
- posted by takaoh
- 00:22
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